ゆるく継続メモ

本の感想文、花と雑学の備忘録

小説『アルケミスト 夢を旅した少年』を読む

前々から読んでみたいと思ってたブラジル人作家パウロ・コエーリョさんの『アルケミスト 夢を旅した少年』
ようやく、読んだ。

一言で言うと良かった。
買って良かった。


ちなみに私が読んだのは日本版特別メッセージと特製サイン入りの『アルケミスト Anniversary Edition』のほう。
何か表紙、オシャレじゃない?




こんな人にオススメ↓

人生観を見つめ直したい     ★★★★
スピリチュアルな雰囲気が好き  ★★★★
夢がある            ★★★★★




ざっくりあらすじ

羊飼いの少年、“サンチャゴ”は平凡に暮らしていたが本当は昔から旅がしたかった。羊飼いになったのもいろいろな町に行けるからだった。
ある日、サンチャゴは夢を見た。それは、“子供が自分をエジプトのピラミッドに連れていき、「ここに宝物がある」と教えてくれる”という内容だった。
サンチャゴはこの夢のことが気になり、夢の意味を解釈できるというジプシー(※1)の老婆やセイラム(※2)の王様の助言を聞き、宝物を探す旅に出る。

旅の道中、サンチャゴはたくさんの人と出会い、あらゆる選択をする。
この出会いや選択を通してサンチャゴは自分の本心を見つめ直すことになっていく。


※1 ジプシー・・・ヨーロッパで生活する移動型民族のこと
※2 セイラム・・・アメリカの都市




登場人物

サンチャゴ・・・羊飼いの少年。宝物を探すためエジプトに向かう。サンチャゴという名前は最初しか出てこない。ほぼずっと”少年”と書かれている。
セイラムの王様・・・町で出会った謎の老人。サンチャゴが旅に出るきっかけとなった人物。
錬金術師・・・旅の途中で出会い、サンチャゴを導いてくれる。アルケミスト




感想

全体的にスピリチュアルな雰囲気の物語だった。
ただの羊飼いだったサンチャゴ(以下、少年)が宝物を探しにエジプトのピラミッドまで旅をする。という話。
ちなみに少年はスペインのアンダルシアからスタートする。
(現在スペインからエジプトまでは飛行機で約5時間かかるらしい。勿論、少年は飛行機には乗らない)


まだ少年が平凡な羊飼いをやっていた頃、全てをわかっているような口ぶりの謎の老人(セイラムの王様だった!)と町で出会い、少年は旅に出ることを決意する。
この王様が結構良いこと言う。
多分「ちょっと旅、出たいなぁ~」って軽い気持ちの人でも「旅に出るべきかも!」って思っちゃう気がする。
それが若者なら尚更だ。
だから、すでに旅に出たい気持ちが強かった少年は一瞬悩むもすぐ旅に出ちゃう。



少年は旅の道中であらゆる幸運や悲劇に見舞われるもその度に自分の心に『本心』を聞き、選択していく。
その選択は常に前向きで諦めないということに一貫していた。
あとは王様から「前兆を読め」と言われいていたので「これは前兆だ」と感じることがあれば、それに従い行動していく。

ここで言う『前兆』っていうのは『必然』みたいなことなのかな?って私は解釈した。

例えば、旅に出る時に王様に「困ったらこの石が助けてくれる」と、とある2つの石を渡される。
旅の途中、悲劇に見舞われ途方に暮れていた時、少年は袋に入った石に「僕は宝物を見つけることができるか?」と聞き、石を袋から取り出そうとした。
しかし袋に穴が空いていて2つ共穴から落ちてしまった。
この時、少年は「これは前兆なんだ」と思う。石はいつでも穴が空いた袋から落ちることができたのに質問したタイミングで穴から落ちた。
このことで「聞いてはいけないことがある」ということを学び、「自分の意志で決定する」と決める。


まあ『前兆』ってなかなかこじつけでは・・・?
って思わなくもないけど、私はこの考え方が好きなので無問題。

私も偶然ってものはなくて、あるのは『必然』だけ。
っていう思考なのでパウロと気が合うと思う。


あとこの石、登場シーンは多くないけど忘れた頃に出てきてちょっと感動した。



結果的に少年はこの『前兆』を読み取り行動していく。
この”行動する”っていうことが何より大事なんだと思う。
行動しないと良くも悪くも変化もしないし。

「学ぶ方法は一つしかない。それは行動を通してだ」

って作中でも錬金術師が言ってたし。



終始、少年の選択と行動力に幸あれ。って思いながら読んでた。
あと宝物が何なのかも気になるところ。

読み終えると、自分が何かに迷ったり悩んだりした時に「全部考え方次第、行動次第なんだ」って前向きに考えられる人間になれる気がする。




心に残ったシーン

・19~20P 少年が序盤でふと考えたこと

「羊たちは何も自分たちで決めなくていいんだな」と少年は思った。もし僕がすごく残忍な男になって一頭ずつ殺すことにしたとしてもほとんど仲間が殺されてから彼らはやっと気付くだろう。
なぜなら、彼らは僕を信頼していてもう自分たちの本能に従うことを忘れている。

「どうした少年!」って驚いたけど少年自身も自分の考えに驚いてた。

つまり、自分たちで考えて決めること放棄してしまっているから手遅れになる。
ってことだね。
まるで今の日本のようだ。



・41P セイラムの王様が少年とパン屋を眺めながら言った言葉

「結局、人は自分の運命より他人が羊飼いやパン屋をどう思うかいうことのほうが大切になってしまう」

どうやら、パン屋の男も子供の頃は「旅をしたかった」らしい。でも旅をするお金を貯めるためにパン屋になった。それからずっとパン屋をやっている。
羊飼いになれば、少なくともパン屋よりは旅ができたはずだが男はパン屋になった。それはパン屋のほうが羊飼いより立派な仕事だと思ったから。

・パン屋になると、お金が貯まる。家も買える。まわりから立派だと思われる。でも旅には出られない。
・羊飼いになると、いろいろな町に行ける。でもお金は貯まらないから家は買えない。

↑極端かもしれないけど、こういうことだ。

どちらを選ぶかは本人次第だし、どちらも間違いではないけど、王様は「自分の夢はいつでも実行できるはずだけど、まわりの評価や世間体などを気にすると自分が一番したいことがわからなくなってしまう」ということが言いたかったんだと思う。



・184P 少年が「なぜ、人の心は夢を追い続けろと言わないのですか?」と尋ねた時に言った錬金術師の言葉

「それがもっと心を苦しませることだからだ。そして心は苦しみたくないのだ。」

まさにこれが一番難しいところだなって思う。
何にも気にせず夢を追い続けられたらいいけど、人間そういうわけにはいかないもんね。
だいたいの人が夢と折り合いを付けながら人生を生きて、死んでいくんだろうな。




最後に

25年前に初めてポルトガル語で出版された『アルケミスト』は実は最初は全然売れなかったらしい。
出版社には契約を打ち切られ、本を買い取れと言われる始末。


でも別の出版社でゆっくりと売れ始め、最終的にはNYタイムズのベストセラーリストに300週以上連続で載り続けるくらい売れに売れた。
世界80か国以上の言語で訳され、今では20世紀の名作に数えられる程になっている。

それは、別出版社で売れ始めた頃、ブラジルにやってきた1人のアメリカ人が翻訳し、アメリカの出版社に持ち込んでくれたおかげかもしれないし、当時のアメリカの大統領のビル・クリントンがこの本を持ってホワイトハウスを出ようとしているところを写真に撮られたからかもしれない。
マドンナやウィル・スミスがこの本について語りだしたからかもしれない。
(↑全部凄いな)


「あなたが何かを望む時、宇宙全体があなたを助けてくれます」

この言葉は作中にも何度か出てくるけど、パウロ自身が前書きにも書くくらい伝えたかったことだろう。
パウロはこの本について「自分のたましい」について書いた。と語っている。
まさにそうだと思う。



私の中でも手元に置いておきたい小説ベスト5に入るかも。
悩んだり迷ったりした時に読み返す用で。


では。