恒川光太郎先生の『秋の牢獄』を読んだ。
恒川先生は『夜一』という小説で日本ホラー大賞を受賞している作家さん。
ちなみにこういう人におススメ↓
不思議系ホラーが好き ★★★★
世にも奇妙な物語が好き ★★★★
難しい文章に抵抗がある ★★★
ざっくりあらすじ
女子大生の‟藍”はある日突然、11月7日を繰り返すようになってしまった。
原因は一切不明。どこに行こうが何をしようが1日が終われば、また11月7日が来る。
これはいったいいつまで続くのか?私の頭がおかしいだけなのか?
藍は絶望していく中、自分と同じく11月7日を繰り返している‟隆一”と出会う。
隆一に連れられ、大きな公園に行くと老若男女の15人の人達がおり、その人たちは藍達と同様に11月7日を繰り返している‟リプレイヤー”なのだという。
世界は確実に変質した。藍や隆一達はこれからどうなってしまうのか・・・。
登場人物
藍・・・女子大生。
隆一・・・20代の男性。藍と会った時点で50回程11月7日を繰り返している。
リプレイヤー・・・11月7日を繰り返している人達。藍と隆一を含め15名ほどいる。
北風伯爵・・・謎の白いひらひらとしたおばけ?のような存在。不穏な感じ。リプレイヤーにしか見えない。
心に残ったシーン
18P
私を含めた人々の記憶は世界を騙すために巧妙に創られた偽物で世界はそもそも11月7日しかなかったのではないか。
藍が11月7日を繰り返すようになって考えていたこと。
空想妄想家の私はよくこういうことよく考えてるからすごく共感した。
私も同じ状況になったら同じこと考えそう。で、頭狂いそう。
53P
100回だって殺せる。
リプレイヤーの1人の発言。
これは悪い人ならすぐ考えちゃうし実行しちゃうことだな。
殺人犯しても朝になったらリセットされてる世界。
悪い人じゃなくてもやっちゃうかも。
61P
11月7日がただひたすら永劫に続くとしたらどうだろう。私はやがて行動をする気力を失い、朝起きたら睡眠薬を買いに行き、あとは一日中眠るだけの日々を続けるような気がする。
このパターンもあるね。
何十回も繰り返したら、この無気力パターンに行きつくこと山の如し。
感想
同じ日を繰り返していて「なぜこんなことが起きているのか」「これからどうなってしまうのか」「ずっとこのままなのか」という疑問を抱きつつもリプレイヤー達は奇妙にも平穏な生活を送っていくという不思議な状態が続いている。
その日に怪我をしても、何なら死んでも寝てしまえば元通り。
うーん・・・自分ならどう思うだろ。
最初はめっちゃ焦りそうだな。で、解決策を血眼で探しそうだな。
でも何十回も続くともう諦めちゃうのかもな~~。
もうこういう人生なんだ・・・南無。みたいな。
あ、でもただ平穏な暮らしが続くわけじゃなくて‟北風伯爵”っていう異質な存在に出くわしてしまうと消えてしまうらしい。
一応、こういう緊張要素もある。
だから、リプレイヤー達は北風伯爵を見かけたら逃げるようにしてるみたい。
でも玄人リプレイヤーは「北風伯爵に出くわして消えた人は11月8日に行った」って言ってる人もいて、それなら恐怖の存在ではないのかも?みたいな可能性も感じたり。
まあ、消える=死ぬ だったら終わりだけど。
全体的に世にも奇妙な物語的だった。
おどろおどろしい恐怖を感じるようなホラーというより、不思議な世界に入り込んじゃって「いったい何が起きているんだろう?」と漠然とぞわっとするような物語のように感じた。
個人的に好きな雰囲気の物語だったな。
最後に
ちなみに表題作以外に2編収録されてた。
だからこの『秋の牢獄』自体は70Pくらいだった。
個人的に表題作以外の2つも好きだから別で書こっかな~。
では。